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SHICORE Talk Vol.2:「梅おばさん」こと乗松祥子さんが語る『体を浄化する「梅」使いの極意』

「梅おばさん」こと乗松祥子さんと一緒に。
「梅おばさん」こと乗松祥子さんと一緒に。

みなさんこんにちは、花田景子です。自分の中に「核」を持ち、より美しく健康なライフスタイルを探るための連載、『花田景子のシコアトーク』。
第2回目は、本物の「梅」を追求し、その効用を日々の暮らしに生かす「梅おばさん」こと乗松祥子さんのお店、東京・板橋にある「延楽梅花堂」をお尋ねしました。

「延楽梅花堂」は、乗松祥子さんが2009年にオープンした、梅の専門店です。
乗松祥子さんは、偶然百数十年前の梅干と出会い、日本食の原点、保存食の王様と称される梅のもつ不思議で偉大な力に魅せられたといいます。それから約40年。今では「幻の梅」と呼ばれ、大切に伝承されている約500年の歴史を持つ品種、「杉田梅」の力強いパワーに刺激され、梅を愛でる日々を送っていらっしゃいます。

「延楽梅花堂」正面 「延楽梅花堂」には、ありとあらゆる梅製品が並んでいます。「梅塩」「杉田梅干し」「梅肉エキス」「梅ジェリージャム」「梅ふりかけ」「梅酢」「梅味噌」「杉田梅ジャム」「梅しぐれ」。これらの製品は、透明の小瓶に入れられ、金色の蓋がされて、やはり金色の小さなラベルが付けられ、綺麗に陳列されています。そこにも、シンプルで、本物を追求する乗松さんの姿勢が見られます。
本人が納得するまで研究し、そのためには、日本全国を駆け回り、その五感をフルに使って、梅のために懸けた時間と情熱が感じられる嘘偽りのない製品。無駄なキャッチコピーや、人の目を引くための包装など、全く必要はなく、ここでは、梅があくまで主役なのです。

花田こんなにたくさんの梅製品が並んでいますが、すべて乗松さんのお手製なのですよね。そもそも「梅」との出会いはどのようなことからだったのでしょうか? 乗松

今から30〜40年程前でしょうか。当時勤めておりました京懐石の店、『辻留』が、引っ越しすることになりまして、引っ越しの片づけをしておりました時、床下か古い新聞紙に包まれた壺を見つけました。日露戦争のことが書いてある新聞でした。中から出てきたのは、150年前に漬けた梅干しでした。

黒ずんでころころしたものがいくつも入っていました。とても食べ物には見えませんでしたが、長い年月を経ても生きている梅干しに、衝撃を受けたのが梅干しとの関わりの始まりでした。そしてもう一つ。「辻留」では師匠の寝起きからずっと一緒にいるような生活でしたので、一年間に5日位しかお休みがいただけませんでした。でも、「梅干しを作る」というと、休むことができたのです。お休みほしさに「梅干しを作る」。それも大きなきっかけでした。(笑)

ひとたびお話が始まると、まるで梅の歴史書を紐解いているような、樹齢 300年の梅だとか、150年前に漬けられた梅干しだとか、瞬時に実感することが難しいような「梅話」が次から次へと飛び出してきます。300年前の人には会えないし、150年前に作られた食品を食べることはまずあり得ません。でも、彼女が相手にしているのは、その途方もない時間を生き続けてきた、食品なのです。

花田梅の効用について少しお話を聞かせて下さい。 乗松

私の作る梅干しは酸っぱいのです。私がこだわる「杉田の梅」は品種改良などされていない、日本古来の貴重な品種です。「杉田の梅」の最大の特徴は、いわゆる「クエン酸」含有量の多さ。だからとても酸っぱいのです。「クエン酸」は体内でエネルギーの代謝を助け、疲労回復を促します。

梅が日本に渡ってきたのは1500年前、中国からだと言われています。梅の実が、漢方薬として、咳止め、鎮痛、解毒などの薬効があったそうです。もともと、薬として入ってきた梅。その効用を考えれば「酸っぱさ」は不可欠なんです。私の作る「梅肉エキス」は特に酸っぱいと思います。小さな小瓶ひとつ分に13キロもの梅を使います。

梅は真っ青の時には苦味しかございません。ところが、75%熟すと酸っぱくなってきます。梅肉エキスを作るのには、梅が青いうちに採り、それを30時間煮ます。青い梅に火を入れると「ムメフラール」という成分が生まれ、この成分が血液を浄化する作用を持ちます。

様々な病の方々がこの「梅肉エキス」を求めてお店にやってくるそうです。とにかくこのエキスは強烈に酸っぱい。でも効用を伺うとその酸っぱさも有難くなってきます。

花田今、梅をとりまく環境はどんなものなのでしょうか? 乗松

ここ最近は、「酸っぱくない梅の木を作る」動きが、あちこちに見られます。「食べやすさ」先行ということでしょうか。ですが、酸っぱくない、クエン酸のない梅干しなどは「カス」を食べているようなもの。O157には、このような梅干しでは勝てません。

7〜8年前位からは、多くの種類の梅のクエン酸濃度が低くなり、加工しても味がないという問題が起こりました。そこで漬物用液につけて梅干しを作るという方法で、梅干しを売り出したところ、それが当たり、大変売れているのです。安価な梅干しは注意が必要です。原材料を見れば、漬物液についている「梅干し」がいかに多いかわかりますよ。

そしてもうひとつの問題は、大気汚染ですね。以前は漬け込む梅を水につけて おくと、梅の汚れが水に落ち、水が黒ずんだものでしたが、最近は水が澄んだままなのです。そんなことはあり得ないと、ホワイトリカーで洗ってみたところ、汚れが落ちるのです。つまり、水溶性でない汚れが付着しているということなのです。

大気汚染、樹齢の古い貴重な梅の伐採、すっぱくない梅干しなど、辛く、腹立たしい環境が取り巻いている状況だといえます。本物を追求し、梅の効能を知り尽くした乗松さんは、自分の使命は梅を守り、人々に本当の梅の魅力を伝えることだとおっしゃいます。

暑い日には梅ジュースから始まり、疲れている人には「梅肉エキス」を振る舞 い、寒い日には梅とこぶの入りのお湯で暖をとらせる。酸っぱいが、身体が欲 しているので、酸っぱさも心地よく、身体全体が癒されていきます。ここを訪れる人は、乗松流の歓迎に心を解かれていきます。一見客も馴染み客も彼女には分け隔てがありません。自分のお店に縁あって訪れた人には、自身の豊富な梅の知識、梅への情熱を熱く語ちます。彼女はそれを「伝えること」だといいます。

花田今、乗松さんが力を入れていらっしゃることはどんなことでしょう? 乗松

乗松「幻の梅」といわれる「杉田梅」の樹齢500年余の大木と出会いましてか ら、毎年、1トン半ほどの梅干しを漬けております。その「杉田の梅」の苗を 育て、日本各地に植えて行く活動もしております。各地から「切られそうな梅の老木」の叫びが届き、そのたびに、救済に走るといった日々です。梅を救いたいんです。儲けを考えたら、いい仕事はできません。梅のために祈る、そんな毎日です。

花田最後に若い世代に仰りたいこと、お伝えになりたいことを教えて下さい。 乗松

今の若い人に、この梅の素晴らしさ、そして、梅を取り巻く悲惨な現状……それをお伝えしたいです。昔は、師匠は空気で覚えろ、と全く何も教えてくれませんでした。私自身、『辻留』時代には雪駄で殴られた経験があります。お椀をはじかれたこともあります。でもそこには師匠の「愛」があり、それを感じることが出来ました。

ただ、今の若い人達に何かを伝えるにはどうしたらいいかを考えた時、それは時代が変わり、方法が違ってきているのだと感じざるを得ません。この年になってお若い方達に何が伝えられるのか。伝えることの難しさを感じております。

「梅おばさん」こと乗松祥子さん

乗松さんのお店の商品の棚の下には、大きな甕(かめ)がいくつもあり、その中には年代物の梅エキスが大事に保管されています。その1999年物の梅エキスを、私たちが伺った時に惜しげもなく味見をさせて下さいました。

それは、私がこれまで味わったものとは、まったく別物の梅エキスでした。熟成が進み、味がまろやかになり、のど越しが滑らかで、まったく癖のない……しかし、どっしりとした存在感があって、食べ物の域を超えた体験だったのです。「本物」とはこういうものなのか……と、教えられた瞬間でした。


乗松さんは大変小柄で、そのいでたちは、ローヒール、スラックス、シンプルなニットに、割烹着。自分の信念にのっとった「梅づくり」を、寸暇を惜しみ、昼夜を問わず、納得がいくまで出来るよう、機能的に行動できる衣装なのでしょう。そのお顔には、お化粧気はありませんが、彼女に初めて会った人が一番印象に残るのは、その肌の艶やかさです。シミ、シワはひとつもなく、素肌が張りと透明感に満ちています。まさに「梅パワー」での賜物でしょうか。

お香の造詣も深く、奈良時代からの香木(伽羅・きゃら)を私達に聞香させて下さった乗松さん。人を値踏みすることなく、門をたたく者は皆平等に、「本物」を伝えようとして下さるその生きざまに、まさに「ぶれない」太い太いシコアマインドを見た私達でした。

乗松祥子 氏 & 延楽梅花堂 プロフィール
「梅おばさん」こと乗松祥子は、愛媛県出身。偶然百数十年前の梅干と出会い、底知れる力強いパワーに刺激され、こよなく梅を愛でる日々を送っている。現在は東京都板橋区板橋三丁目の旧前田藩下屋敷跡の東板橋公園側に梅専門店「延楽梅花堂」を開店。著書に「梅暦、梅料理」(文化出版局)、「宿福の梅ばなし」(草思社)がある。

【延楽梅花堂の梅製品で使用している杉田梅について】
今はその名を知る人の少ない「杉田種」は、関東原種といわれている。房総(茂原)方面、山梨山中周辺に派生し、嘗て小田原の僧により横浜磯子に、また一方で小田原の曽我梅林へ伝えられ今日に至っていると言われている。現存する古木は樹齢約400余年と言われており、土地の古老達に「幻の杉田梅」と呼ばれ大切に育成されている。実梅の風味は爽やかで、クエン酸を多く含み、昔懐かしい味わい。

【延楽梅花堂】
所在地:東京都板橋区板橋3-57-5
営業時間:11時〜18時
休日:毎週月曜日
URL:http://www.sugitaumeobasan.jp/

SHICORE Food Vol.2:沖縄特産シークヮーサーを使ったオリジナル・シコアレシピ『シークヮーサー・トマトマリネ』

イメージ写真 【材料】ー 4人前 ー

・ミニトマト … 1パック
・玉ねぎ … 1/4個
・パプリカ … 適宜

(マリネ液)
・はちみつ … 小さじ1
・オリーブオイル … 100cc
・塩・胡椒 … 少々
・砂糖 … 小さじ2
・きざみバジル … 3枚
・すりおろしニンニク … 適宜
・ワインビネガー … 大さじ1
・シークヮーサー果汁 … 大さじ2

【作り方】
  1. ミニトマトは湯むきにする。

  2. 玉ねぎ、パプリカはみじん切りにする。

  3. マリネ液に、みじん切りにした玉ねぎ、パプリカを入れて混ぜる。

  4. マリネ液に、湯むきにしたミニトマトを漬け込む


※漬ける時間はお好みですが、冷蔵庫で1〜2時間冷やせばOKだと思います。

SHICORE Food Vol.2:沖縄特産シークヮーサーを使ったオリジナル・シコアレシピ『夏のヘルシーサラダドレッシング』

【作り方】
  1. ボウルに、オリーブオイル、シークヮーサー、塩、(アンテョビ)を入れ、よくかき混ぜる。

  2. 少しドロっとしてきたら、お好みで胡椒を加え完成。

【材料】 ・塩・胡椒
・オリーブオイル … 50cc
・シークヮーサー果汁 … 大さじ2〜3
・アンチョビ … 1切れ
(粗みじん切り ※無くてもOK)

※ヘルシーで、生の夏野菜やバーニャカウダソースとしてもお薦めです。

SHICORE Food Vol.2:沖縄特産シークヮーサーを使ったオリジナル・シコアレシピ『ノンアルコール・ブラッディマリー風/疲労回復!蜂蜜+シークヮーサードリンク』


疲労回復! 蜂蜜+シークヮーサードリンク

【材料】ー 1人前 ー ・炭酸水 … 180cc
・蜂蜜 … 大さじ1
・シークワーサー … 小さじ2
ノンアルコール・ブラッディマリー風

【材料】ー 1人前 ー ・トマトジュース … 100cc
・シークヮーサー … 大さじ1
・ソース(あればリーベリン、またはウスターソース)
 +タバスコ少々+塩・胡椒

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