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SHICORE Talk Vol.4:アロマセラピーの専門家、塩田清二教授に学ぶ『「香り」は「脳」に効く、「美と健康」に効く PART2』

塩田清二先生にお話しを伺う私。
アロマセラピーの専門家、塩田清二教授との対談シーン。

みなさんこんにちは、花田景子です。自分の中に「核」を持ち、より美しく健康なライフスタイルを探るための連載、『花田景子のシコアトーク』。
第4回目も前回に引き続き、メディカルアロマセラピー研究の第一人者、昭和大学医学部第一解剖学講座主任教授、塩田清二先生にご登場いただきました。前回、「香り」の成分は私たちの脳や体内にどのように吸収され作用しているのか、その不思議なメカニズムについてお話しいただきましたが、今回はさらに老化と「香り」のアンチエイジング効果について教えていただきました。

花田今、アロマセラピーといわれているものが生活に密着してきたのは、どの位前からなのでしょう? 塩田

それが一般化してきたのは、非常に最近のことだと思います。アロマの歴史は、もともとエジプト時代に始まり、アラビアに伝わりました。アラビアというところは、ルネッサンス以前、科学がとても発達した地域だったんです。中世ヨーロッパは、キリスト教の様々な規制でがんじがらめだった時代で、科学が否定され、本を焼いたりした時代でした。ヨーロッパで始まった文化は、10世紀頃、アラビアに移って発達し、「錬金術」なども登場しました。

花田「錬金術」……というのはよく聞きますが、具体的には、どのような技術だったのでしょう? 塩田

「錬金術」というのは、例えば石の中に含まれる高価な金属を蒸留し、成分を分けて取り出すといったことです。そういう科学的な技術が、アラビアで発達していたんです。それを植物でやってみたらどうだろう……と試したところ、植物の成分が水と油に分かれ「精油」が出来たんです。それが今「エッセンシャルオイル」を、水蒸気蒸留法で抽出していますが、実はアラビア時代に始まったものなんです。アラビアでは最初「錬金術」から始まって、それが、香木や葉っぱなどを蒸留して、エッセンシャルオイルを採るという方向にも発達していきました。それを日常の様々な場面で利用していました。もちろん「香り」としても使われたのですが、虫歯の治療にも使ったりしていたようです。

花田虫歯に何を使ったのですか? 塩田

今でもそうですが、虫歯になると「抜髄」といって神経を抜くわけです。虫歯の穴にヒ素を入れて、それで神経が死にます。それが抜髄で、その時にいっしょにエッセンシャルオイルを入れた……と、記録が残っています。

花田歯の神経を、精油で麻痺させるんですか? 塩田

精油である程度麻痺させることができ、また鎮静効果もあります。

花田ずいぶん古くから治療に使われていたのですね。 塩田

そう、科学文化が発達したアラビアでは、日常的に行われていたようです。その後、十字軍が遠征した時にその技術をヨーロッパに持ち帰ったんです。蒸留法がヨーロッパに伝わったのは、ルネッサンス(15〜16世紀)辺りです。16世紀位から実際にその技術を使って、ヨーロッパでもエッセンシャルオイルが造られるようになったと言われています。フランスなどで実際にエッセンシャルオイルを使って医療を行ったのは、19世紀からです。それも最初から医療に使ったのではなく、たまたま偶然から始まりました。フランスのガット・フォッセという科学者が研究中に火傷をしてしまい、近くにあったラベンダーオイルを塗ったところとても治りが良かった。それで「アロマセラピーは医療に使える!」ということになったそうです。それが1920年以降だと言われています。

花田
実は先日、取材でフランスに行きました。南仏の方の田舎にラベンダー畑があって、そこで今先生がおっしゃったように、その抽出法を唯一今もやっているラベンダー屋さんがあるんです。とても小さな小屋でラベンダーオイルを造って販売もしているのですが、そこのおじいさんの肌がツルッツルで、とてもきれいだったんです。「おばあちゃんの知恵袋」じゃありませんが、そのおじいさんが「火傷したり、鼻がむずむずしたりしたときにはラベンダーがいいんだよ。一家に必ず1本はなきゃ駄目だ」とおっしゃっていたんです。
さまざまなアロマの素材
2012年8月、NHK出版から塩田先生のご著書、
『<香り>はなぜ脳に効くのか』が刊行されました。
塩田

そうですね。正に民間療法のような形で発達してきたんです。それはラベンダーだけに限らず、現代ではいろんな植物のエッセンシャルオイルが採れていますから、それらの機能、どういう働きがあり、どういう効果を生むか……を、色々と調べるのが我々の仕事なんです。

花田
さて、私もいろんな意味でいい年齢になりましたので(笑)、視覚や聴覚などいろんな部分の老化を感じるんですが、シークヮーサーのアンチエイジング効果について、もっと詳しく教えていただけますか?
塩田

シークヮーサーを生産している沖縄本島北部にある大宜味村(おおぎみそん)は、日本一の長寿の地域として有名です。ここの人達は、70才80才の方でも肌はツヤツヤだし色もとても白いんです。

花田沖縄に暮らしている方……というと、普通は日に焼けた、小麦色を想像しますよね。長寿だけでなく、美白効果もあると? 塩田

そうです。紫外線に対する光毒性を緩和する働きがシークヮーサーにはあるということなんです。ジュースでもエッセンシャルオイルでも効果はあると考えられます。実は今、これを使った化粧品を開発中なんです。

花田それは楽しみですね。 大宜味村で採れる、もぎたてのシークヮーサー塩田

もともと沖縄は長寿の地域で、女性は全国1位ですが、大宜味村では、男性も長寿1位なんです。那覇から車で2時間くらい北に行った所にあり、そこでシークヮーサーを栽培しています。生産者であるおじいちゃんおばあちゃんは、レモンやカボスのように、毎日シークヮーサーを飲んでいる訳です。魚にかけたり、いろんな物に入れたりして。ですから、かれらのバップ値(酸化ストレスを抑える効果)が非常に高く、コルチゾール値(ストレスホルモン)が低いんです。

花田とても健康な状態ということですね。
塩田

そうです。そして紫外線に対しても強い。そして、これはまだ科学的に証明されたわけではありませんが、認知症の人が少ない、とも言われています。つまり、長寿で健康で認知症も少ない。

花田理想的ですね。
塩田

それから、がんの患者も少ないんです。シークヮーサーには抗がん作用もあるようです。10年位前からですが、シークヮーサーを分析すると、ノビレチンというフラボノイドの分子が多いことが判り、これがいいのでは? と言われてきました。ですが、私はどうもそうじゃないんじゃないかと思っています。なぜなら、ノビレチン単体だけではこのような効果が見られないからです。しかし、シークヮーサーをそのまま摂取すると、大変効果がある。つまり抗酸化作用はノビレチンだけでなく、その他の色々な成分との複合的要素で効果が出るのではないか、と考えたわけです。成分一つ一つを調べていくよりも、シークヮーサーを丸ごと絞って飲んだり、精油を使った方がいいと思います。お風呂に入れてもいいと思います。

花田
アンチエイジングはもちろんですが「シークヮーサーは、認知症にも効果があるかもしれない」と、以前沖縄特販さんに伺ったことがあります。例えばデイケアサービスなどで、焚いてあげるだけでも違うかもしれませんね。
塩田

そうですね。私のスタッフで、認知症についてずっと研究を行っているのですが、なかなか興味深いデータが上がってきています。例えば、エッセンシャルオイルを認知症の患者さんに、昼間1日2時間かがせるんです。レモンなど柑橘系の香りで、それが1か月位すると、アルツハイマーの患者さんでも、認知機能が上がるというデータが出ています。

花田凄いですね。認知機能アップには、柑橘系の香りがいいのですか? 塩田

柑橘系です。特に昼間使うのがいい。認知症の患者さんは「日内リズム」……という、活動と睡眠のリズムがおかしくなることが判ってきています。これは昼間ウトウトして、夜になると脳が活性化してなかなか眠れないので動きまわる。これが徘徊です。夜しっかり眠れないので、昼間ウトウトしてしまう。このリズムを変えてやればいいわけです。昼間に覚醒効果のあるペパーミントや柑橘系の香りで脳を活性化させ、夜寝る前には、ラベンダーなどの香りで鎮静させれば、よく眠れるようになる。そういう日常のリズムを作ってやればいいわけです。そうすることによって、認知症などの学習障害も改善することができるということが解ってきました。だから、シークヮーサーも使えるだろう、と考えたのです。

花田私たち女性が一番関心の高い、シークヮーサーの「アンチエイジング効果」についても教えてください。 塩田

先ほどもいいましたが、まずは美肌効果ですね。シークヮーサーは、皮膚に非常にいいです。シークヮーサーの精油には「光毒性」がないことが判っています。普通、紫外線が皮膚に当たると、ここで活性酸素が発生しますが、シークヮーサーにはこれを打ち消す力があることが判りました。

花田私も最近紫外線を浴びると、湿疹ができるようになってしまいました。これも老化現象でしょうか?(笑) 塩田

シークヮーサーオイルを希釈して塗ったりするのもいいのですが、まずはジュースを飲んだらいいと思いますよ。これにより、体内の酸化ストレスを下げ、当然紫外線ストレスも軽減しますから。

花田どのような飲み方をすればいいのですか? 炭酸割りなどでもいいのでしょうか? 塩田

それでも構いませんが、私は今、1日50mlをそのままストレートで飲んでいます。酸っぱいですが、慣れるとどうってことありませんよ。逆にあの酸っぱさが快感になってくる。(笑)

花田そうですか。私はお料理や、お酒を割って飲んだりはしていますが。 塩田

それでもいいですね。どんな形でもいいです。体内に摂取すると、腸管から吸収され、皮膚や体のあちこちに届けられるでしょうから。

花田
フランスで白ワインを作っているワイナリーで、ブドウを絞ったあとに皮と種が残りますが、それがもったいないということで活用法が考えられたんです。それを色々と調べたら、アンチエイジングや美肌にもいいということが判り、後にブドウ成分を美容法に活用するスパ施設ができたんです。ですから、沖縄特販さんにもいかがですか、とお願いしたんです。ほんとに広範囲に色んなことが考えられますよね。
塩田

そうですね。シークヮーサーに含まれるノビレチンなども、ポリフェノールの一種ですから、赤ワインに含まれる成分と変わらないんです。フラボノイドと呼ばれる、植物由来の物質ですから。赤ワインもシークヮーサーもそれに含まれるフラボノイドが体内のバップ値を上げ、酸化ストレスを下げる役割をする働きがあるのだと考えられます。ただ、おそらくですが赤ワインよりもシークヮーサーのほうがその力が強いと思います。

花田
私がアロマと出会ったきっかけは、親方(貴乃花)が現役のころ、確か1997〜1998年頃、国技館からの帰りがいつもより遅かったんです。それで「どうしたの?」と聞きましたら、「日本橋の辺りのアロマショップに寄って来た。」と言って、アロマオイルをたくさん買ってきたんです。その頃はまだアロマがそれほどメジャーではなく、私自身はハーブティーくらいしか知らなかったんですが、そのお店の方が、それぞれのアロマの効能を紙に書いて下さっていて、例えば筋肉の緊張を緩和させるマッサージオイルとか、ディヒューザーで焚く物とか。それから我が家ではアロマを切らしたことがないんです。ですから、うちの若い衆たちの部屋でも、インフルエンザの流行る冬は、ユーカリやティートゥリーを焚きます。そうすると、たとえ一人が風邪をひいてしまっても、そこからみんなに広がらないんです。
塩田

そうでしょ。あれは抗炎症作用、抗菌作用があるからなんですね。聞くところによると、オリンピックで活躍したなでしこジャパンのメンバーも、アロマを部屋で焚いていたそうですよ。

花田そうですか。確かにリラクゼーション効果がありますからね。 塩田

緊張するとどうしても筋肉が硬直して本来の力が出せなくなる。だけど、リラックスさせてゆっくり眠ることで、体にエネルギーが充満し、思った力が出せるわけですね。ですから、リラクゼーションというのは非常に大事なことなんです。ラベンダーなどを嗅いですっと緊張を解く。するとまた力が出るわけです。そういう利用法も、とてもいいと思います。

花田
場面場面でアロマを上手に取り入れていくと、効果抜群ということですね。貴乃花部屋の稽古場では、師匠(貴乃花親方)の横でお香を焚いているんです。相撲の稽古は激しくて、いわゆる錯乱状態に近い状況になってしまう。そんなとき、師匠の前に行くとお香の香りがフ〜と入ってきて、そこでまた覚醒することができるって言うんです。ああいう極限のところでも、香りの効果があるんだな、と。
塩田

お香は本来宗教的な所から入ってきたものです。仏教ですから仏様を拝みますね。拝んでいる時にその香りが入ってくると、非常にリラックスし、鎮静効果がある。それで静かに自分の気持ちを休めることができる。香りと音などで、宗教的な効果を高めてきたのかも知れませんね。お香を焚くというのは、五感刺激の中の一つに入っていたのではないでしょうか。稽古場では、けがをさせてはいけないので、リラクゼーションとともに緊張も当然必要ですよね。そんな時はペパーミントなどの柑橘系オイルがいいと思います、覚醒しますから。

花田本場所に行く前など、いいかもしれませんね。 塩田

逆に緊張しすぎてしまっているときはラベンダーです。

花田先生は普段何を使っていらっしゃいますか? 塩田

私は主に柑橘系ですね。シトラスなどの。

花田これからますますストレス社会になってゆくでしょうから、香りを上手く生活に取り入れるようにするといいですね。 塩田

認知症にもいいですが、子供のいじめ問題にも効果があるんじゃないかと思うんです。いじめとは、子供に荷重にストレスがかかっていて、そのストレスのはけ口として、いじめのような所にいってしまうんじゃないかと。いじめる側も、精神的には相当追い込まれてしまっているのではないか。そういう子供たちに香りをかがせてリラックスさせてあげたら、良くなるのではないかと思うんです。

花田学校でもアロマを取り入れ、焚いてあげるといいかもしれませんね。学校では何がいいのでしょう? 塩田

ラベンダーがいいと思いますよ。今、学校で朝読書の時間を設けているところもあるようですが、この時に一緒にアロマを焚いたらいいのではないでしょうか。音読をするとリラックスすると言われていますが、アロマを焚くとこれと同じ効果があると言われています。小学校でも「若年性鬱(じゃくねんせいうつ)」の対策などができるはずですよ。今、精神のコントロールができなくなるような病気が、非常に多くなっているようです。たぶん物事の切り替えが、下手になっているんじゃないでしょうか。例えば脳が活性化する時と鎮静化する時の切り替えです。睡眠はちゃんと取る……といったことなどが、できなくなっているのではと思います。生活習慣の問題かもしれませんね。今の若い人たちは昼と夜の区別がない。夜だらだら起きているので朝眠い。眠いから食欲がない。それでエネルギーが出ない。この悪循環の繰り返しでしょう? ですから、生活のリズムをちゃんとしてあげることは、とても大事なんです、子供でも大人でも。

花田だからアロマを上手に取り入れる、と。 塩田

日本もこれから超高齢化社会を迎えます。高齢者がどんどん増え、70歳〜80歳になると認知症も増える訳ですが、一方で若い人が減って、介護する人達が減ってくる。

花田いろんなところでストレスが増えてきますね。 塩田

そう、介護する側もされる側もストレスが増える。そこを軽減する方法を考えなければなりません。

花田ですから、高齢者が増えても、元気な高齢者ならばいい、と。健康的な若者も増えて。 塩田

今の日本は、平均寿命は世界のトップレベルと高いが、一方で健康寿命というのがありますが、この健康寿命と平均寿命には10歳の開きがあるんです。平均寿命が90歳だとすると、その10年前=80歳から10年間は、寝たきりや認知症など『不健康』だということです。ですから、その10年をいかに減らすか、が大事なんです。平均寿命と健康寿命を近づけることにより、医療費も減らせますし、介護する人も減らせます。社会にとって物凄いプラスなんです。そういうことを予防的に行わなければなりません。

花田予防にもなるし、既に患っている人には症状の軽減にもなると。 塩田

その通りです、両方です。

花田
シークヮーサー、アロマを生活に取り入れ、この力をもっともっとPRしていかなければなりませんね。個人的には、色んな効果が期待される、シークヮーサーアロマの商品化がとっても楽しみです。先生、今日は貴重なお時間を本当にありがとうございました。


塩田清二(しおだ せいじ)氏 プロフィール
昭和大学医学部第一解剖学講座主任教授。1974年に早稲田大学教育学部生物学研究科卒業後、新潟大学理学研究科修士課程修了、昭和大学第一解剖学講座にて医学博士号取得。日本アロマセラピー学会理事長、日本統合医療学会副理事長などを務める。専門は神経ペプチドを中心とした神経科学。

  2012年8月、著書『<香り>はなぜ脳に効くのか』を発行。好評発売中。 ¥740(税別)NHK出版刊

SHICORE Food Vol.4:沖縄特産シークヮーサーを使ったオリジナル・シコアレシピ『とりの唐揚げシークヮーサーかけ』

料理写真

材料
【材料】ー 2人分 ー ・とりむね肉 … 3枚

<つけ汁>
┌・しょうが … 1片
│・にんにく … 1片
│・しょうゆ … 大さじ2
│・紹興酒 … 大さじ2
│・はちみつ … 大さじ1
└・シークヮーサー果汁 … 大さじ2


<ソース>
┌・砂糖 … 大さじ2〜2.5
│・水 … 1/2カップ
│・昆布茶 … 小さじ1
│・シークヮーサー果汁 … 大さじ4.5
│・片栗粉 … 適宜
└・酒 … 1/2カップ


・サラダ油
・片栗粉 … 適宜

【作り方】
  1. とり肉は食べやすい大きさに切る。

  2. つけ汁をもみ込み、20〜30分ほどおく。

  3. 片栗粉をつけ、揚げる。

  4. 鍋にソースの材料を入れ、火にかける。

  5. 唐揚げにソースをかける。

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